村上春樹さんの全著作を出版順に読む<ハルキチャレンジ>

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1979年から1984年出版の感想はこちら

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1985年-1989年

12:「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」1985/6/15

DATA
  • タイトル:世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド
  • 発行日:1985/6/15
  • 発行元:新潮社
  • ジャンル:小説
  • 読了日:2023/8/14

15年ぐらい前に一度読んだときの衝撃は忘れられません

2つの異なる世界線でのストーリーが章ごとに進んでいく展開の小説にはそれまで出会ったことがなかったので、余計にインパクトが強くずっと心に残る作品です

ラストをハッピーエンドととるかバッドエンドととるかは読者の解釈に委ねられていると言えますが、おそらく大切なのはそこではなく、

【自分で作り出した世界なら、自分の好きなように創り変えていけるんだよ】

ということなのな。

もちろんこのままの世界でもいいし、変えていくこともできる

「で、いったいあなたはその世界でどうしたいの?」


と問われているような気がしました

aki
aki

読み返す度に解釈が変わる、面白い本です

完全なる自由 VS 枠の中での自由

一方で、『果たして完全な自由が幸せであるのか?』

という新たな疑問を感じずにはいられませんでした

「壁の中」という限られた枠の中を不幸であるととらえるのか、枠があるからこそその中では安心して自由に動けると思えるのか…?

それは個々人によって異なるのかもしれません

精神分析の「箱庭療法」では、箱庭という限られた枠の中で自由な表現をすることで、治療を促す心理療法です

「箱庭」という限定された枠があるからこそ、その枠の中では安心してイメージの表出ができます

ある程度固まった信念や目的がないかぎりは、ゼロの状態からいきなり

「どこで何しても、あなたの自由ですよ!好きなように生きて!」と言われても、戸惑ってしまうのではないでしょうか


それよりは、ある世界観がすでに用意されていて、そこから自分の好きなように作り上げ、変えていくほうが、やりたいことが明確化したり次のステップに進みやすい…なんて場合もあるかもしれません。

壁に囲まれた世界の終わりは、新たな世界をゼロから作り上げるというよりは、既存のものを自分の好きな色に作り替えていく、、まさにそんな世界なのかな?と感じました

ワンコ
ワンコ

DIY的な世界だワン!


新たに1から作り上げるのは大変ですが、すでに眼の前にあるモノを修繕したり、すでにあるルールを改変していくことなら、出来そうな気がしてきませんか?

そして、その状態は私達が生まれたときと同じです

すでにあらゆる物が用意され、法があり、一般的な人生の進む道のようなものがあり、それに則って生きていく…

でもどこかで違和感に気づいたら、法というルールの中で、自分なりの好きな世界観を築いて生きていこうとする

長くなってしまいましたが、この物語から私が感じたメッセージを簡単にまとめると、こうなります▼

望めば(変えようと思えば)変わるし、あらゆるものはすでにある。
望まなければ(望まなければ)、きっと何もない。

世界の終わりで生きることを望んだ主人公がこれからどのような世界を作り上げていくのか、この物語の続きを描くのは、我々読者にバトンタッチされたんだと思います


13:「回転木馬のデッド・ヒート」1985/10/9

DATA
  • タイトル:回転木馬のデッド・ヒート
  • 発行日:1985/10/9
  • 発行元:講談社
  • ジャンル:短編集
  • 読了日:2023/12/1

「回転木馬のデッド・ヒート」というタイトルは、まさに私達の人生の一部(もしくは全部!)を的確に捉えていて、ハッとさせられます

現実はどこまでも不思議でおかしくて切なく、そのうえ映画や小説のようなオチがないことがほとんどです

どこにもたどり着かないとわかっていても、戦うべき相手がわからなくとも、ぐるぐると同じ場所を回り続けるしかないときってあります

今、この時もそうなのかもしれません

  • 目的地もないまま、一体なんのために走るのか?
  • 一体、何と戦ってるんだろう?
  • いつまで同じ場所で争いを繰り返すのだろう?

当事者は一生懸命脇目もふらずに走っているのに端から見ると、それはとても滑稽で…

「自分ではもうコントロールするのさえ放棄してしまったから、誰か止めてくれればいいのに」とさえ思ってしまう始末です

ここに収録されているお話はフィクションではなく、本当に起こった話(村上さんが聞いたお話)という点ですごく興味深いうえに、不思議さと浮遊感に満ちたストーリーなのですが、そのうちの2つについて感想を記します

タクシーに乗った男

絵の中の人物に自分と同じ悲しみを見出し、ある時偶然な出来事によって結末を迎えるお話です

その絵はすでに捨てられてしまったので実際に見ることは叶わないわけですが、村上春樹さんの文章の為せる技でしょう、ありありと絵画のタクシーに乗った男性のイメージが湧いてきます

自分の意思が及ばないことについては、ただ風が吹くのを待つしかないときもあるのですね

無理に抗うよりも機が熟すのを待つことで結果的に丸く収まることがあります

時間の力を借りざるをえないことは受け身に見えても、実は能動的な姿勢ともいえるのかもしれません

プールサイド


一見満たされているように見える男性がなぜ涙を流したのか、男性自身にもわからないし、村上さんもあえて自分の考えを示していません

この男性は、折り返し地点の持つ意味に気づかされます

水泳であれば区切りがあることで、自分がどこまで進んできたか、あとゴールまでどれぐらいかが分かるのでラストスパートに向けて速さの加減を調整できます

でもそれが人生となると水泳のようにはいかず、区切りがあることでこの先の身の振り方をどうしていいかが分からなくなってしまったのかもしれません

彼は確実に老いを感じ、老いのいきつく先は死でしかないからです

自分はもう折り返し地点にきていることを受け入れがたく、でも受け入れざるを得ない葛藤から、新たな恋人を作ることで確たる認識へ変えようとしていたのでしょうか?

目標を定めて自分の意思で選択してきた人生にとって、老いという思い通りにならない現実を受け入れることは、彼にとって厳しいことだったのでしょう

老いを受け止めきれない自分から逃げずに向き合うこと、もしくは受け入れられない自分を認識してあげることで、見えてくる新たな景色があるかもしれません

人それぞれに見えるもの、見たいものは違う


「真実はたった一つではなく、人それぞれ違う」ということがこの短編集を通して強く感じたことです

その人にとって「現実に起こったことである」と認識していることは、他人にとっては事実とは認識できなくても、当の本人にとっては実際に体験し、知覚し、眼の前でおこったことであるのです

あるお話の中には、

「現実に生じたことではないのでは?」
「幻聴に近い類の何かではないのかな?」

と感じたものもあります


ただ、出来事を語っている本人にとってはあくまでも「実際に体験した事実」として、村上さんに語っているわけです

それを「実際に起こったこと」にしないと、心の整合性ともいうべき自分自身の中での辻褄が合わなくなってしまうのかもしれません

客観性が当人にとっては必ずしも事実ではないということもまた、ひとつの真実なのかもしれません

人の数だけ現実があり、真実がある
そして、人は自分が見たいものを見て、自分の望む世界を生きている

不可抗力など自分でコントロールできないことは別として、端から見たら本人が望んでいないように見える人生さえも、おそらくは自分自身が望んで作り上げた世界なのでは?と思うのです

aki
aki

この考えは、世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド的ですね

14:「羊男のクリスマス」1985/11/25

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15:「映画をめぐる冒険」1985/12/24

DATA
  • タイトル:映画をめぐる冒険
  • 発行日:1985/112/24
  • 発行元:講談社
  • ジャンル:エッセイ

川本三郎さんとの共著です

こちらの書籍は絶版となり入手困難のため、保留とします(そのうちお手頃価格の中古本を探してみようと思います)

願わくば、再版希望です!

16:「パン屋再襲撃」1986/4/10

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DATA
  • タイトル:パン屋再襲撃
  • 発行日:1986/4/10
  • 発行元:文藝春秋
  • ジャンル:短編集
  • 読了日:2023/12/26

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17:「村上朝日堂の逆襲」1986/6/18

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DATA
  • タイトル:村上朝日堂の逆襲
  • 発行日:1986/6/18
  • 発行元:朝日新聞社
  • ジャンル:エッセイ
  • 読了日:2024/1/1

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18:「ランゲルハンス島の午後」1986/11/1

aki
aki

読書中♪

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